湘南のお墓

 

湘南に住む、湘南で逝く

もうすぐ、父の命日だ。

うちは、両親ともに地方出身で、父が東京で働く転勤族で、昔は会社が社宅というものを破格の家賃で提供(そのかわり給料が安かった)していたので、父が退職するまで持ち家というものがありませんでした。前世紀は、退職金で家を買う、という風潮もあったと思います。

父の再就職が平塚になったために、住処を神奈川で見つけようとしたら、川崎や横浜で駅から至便なところは当時高くて、結局湘南に辿りつきました。

湘南には、サーフィンや湘南での暮らしに憧れて住む人が多いですが、私は親が家を買ったから、という理由だけで住み始めました。

私自身は仕事などて暫く家を離れていたのですが、2年前に父の体調が思わしくない、となったらどんどん悪くなり、病院で検査したらなんと、ステージIVの肺癌。入院したら、2ヵ月で他界。いやはや、色々ありました。

ここ一年は私も暫く実家の湘南に暮らして、今はそれなりに楽しんでいます。仕事で東京に行くと、往復の時間はもったいないな、と思うのですが、東京での暮らしもストレスが多そうで。

 

湘南のお墓

両親が神奈川に住処を見つけ、暫くして、両親がお墓も買いました。

鎌倉などは由緒あるお寺のお墓などもあるのですが、檀家でないとだめとか、高かったりとか、駅から不便だったりとか、色々で、新興住宅地ならぬ、新興墓地?のそんなに大きくない(草取りが必要ない)サイズのお墓です。

父の家は神道でしたが、本人は信念を持って積極的に無宗教だったので、お墓もフリースタイル、というかわかりませんが、自由にデザインさせていただき、通常は○○家之墓、と彫るのを、女子供は将来苗字が変わって、それでもこの墓に入りたいのもいるかもしれない、とそれはやめて、「海」と彫りました。父と兄の名前に「海」があるからなのですが、湘南という場所だけに、誰が見ても湘南のお墓、そりゃあ「海」だよね、と思いますよね。

「海」の墓碑が続出

このお墓を買ったのは、その墓地が売り出してすぐだったので、うちのお墓ができたころはまだ周囲にはほとんどお墓がなかったのです。しかし、どんどんお墓が売れていき、今ではお墓は墓地全体にびっしりですが、うちのお墓から周囲を見回すと、うちと同じように「海」と彫ったお墓がいくつもあるではありませんか!

あ、いえ、いいんですけどね。うちは建立者の名前から取ってるのですが、もしかしたら湘南のお墓、ということで勘違いされて後に続いた人たちがいたのかも、と思ったら、父も罪作りだなあ、と思いました。

うちのお墓には、「海」だけでなく、下の詩も彫られています。

La mer
Les a bercés
Le long des golfes clairs
Et d'une chanson d'amour
La mer
A bercé mon coeur
Pour la vie

これは父が好きだったシャンソンのラ・メールのフランス語の歌詞。

La merもフランス語では海ですが、さすがに同じものを彫っているお墓はありません(笑)。

父のお葬式も、父の最期のノートに従い、無宗教で本当に親しい友人だけを招いて行いました。そして、やはり父の望みで、出棺でこの歌を流しました。こういう希望を残してくれるのは、ありがたいです。

しかし。

無宗教のこだわりがあった父も、一周忌や三周忌についてまでは、さすがに何も残してくれませんでした。

まあ、お葬式をミニマムにやったので、盛大にやるわけはないですが、そもそも一周忌や三周忌も仏教の考え方なんですよね。

クリスチャンの友人の家では、一切やらないと言っていたし。

ともあれ、家族と家族の家族だけで、法事もどきを今週末にやります。

父よ、そして、父がかわいがった過去にうちにいた柴犬ちゃんたち、安らかに眠り続けてね。